うつ病がだんだんと楽になって来た時、本を読めるようになりました。
うつ病がかなり辛い状況の時は読めなかったので、文章を読めて、情景を想像し、内容をじっくり味わえた時の歓びはひとしおでした。
以前も書きましたが、うつ病中なこともあり、ドロドロした話や頭を使ったり人が亡くなるサスペンスは遠慮して、心が温まる、優しい話が読みたいと思い、ネットで調べまくりました。
今回は、うつ病療養中に読んで心が温まった小説3冊について書きたいと思います。
昨夜のカレー、明日のパン 木皿泉さん
こちらに関しては以前書いていて再度になってしまうのですが、3選するにあたり外せない作品なので、書いてしまいます。
ご容赦を…
お話は短編集なのですが、登場人物が繋がっています。
亡くなった夫の父、ギフと暮らすテツコ。
テツコの亡くなった夫の幼馴染で、スチュワーデスだったけれど笑えなくなり会社を辞めたタカラ。
など、テツコとギフとまわりの人たちのお話が書かれています。
温かくて、優しくて、心にじんわり響きました。
そっと寄り添ってくれるような、ふわっと包んでくれるような温かさ。
皆、とにかく温かくて。
それぞれ傷や過去を抱えていて、お互いを思いやって過ごす姿が心に沁みました。
死や病気も出てくるけれど、決して重くはなくて、「ゆっくりでいいんだよ」と言ってくれている感じがしました。
描写も美しくて、風景や音や匂い、色を感じられました。
冬に読んだのだけれど、冬に読んでよかったと思う作品。
お話の中に夏の描写もあるのですが、私の感覚では秋~冬に温かい飲み物を飲みながらほっと読むのが合っているように思います。
羊と鋼の森 宮下奈都さん
本屋大賞を受賞された作品で、ご存知の方も多いかもしれません。
ピアノの調律と調律師に魅せられた男性が、調律師となり、葛藤しながらも周りの人に色々な気づきをもらいながら、成長していくお話です。
音や情景の文章が美しく、静かで穏やかな世界観。
この本を読めてよかったと、しばらく世界観に浸りました。
レビューを拝読していると、「静謐(せいひつ)な文章」という表現がしばしば見られ、初めて静謐の意味を調べて知った私(汗)
静かで落ち着いていること、との意味なのですが、まさに、と思いました。
うつ病で動かなくなっていた五感が少しずつ動いてきたタイミングで読めたことで、感じることをより味わい、大切にしていこうと感じられました。
短編集ではないので、当時読み始める時に少し勇気がいったのですが、読んでみてよかったと心底思った作品です。
終わり方もとても好きでした。
もう少し時間が経ったら、また読みたい。
ツバキ文具店 小川糸さん
先日少し書いたのですが、鎌倉が舞台の作品で、代筆業を営む女性の元に様々な代書依頼が来るお話です。
育ててくれた祖母との間にあった葛藤や、ご近所さんとの温かなお付き合いも書かれています。
ホロっとしたり、ほっこりと温かな気持ちになりました。
舞台が鎌倉というのも、落ち着いて読みやすかったです。
最後のポッポちゃん(主人公)の手紙に涙。
短編集ではないけれど、代書依頼ごとに一つのショートストーリーのようになっているので、「長編小説はまだしんどい…」という方も短編集感覚で読みやすいように思います。
また、穏やかな一定リズムで話が進んでいく感じなので、勢いのある文章はまだ負担があるという方にも読みやすいのでは、と感じています。
現在、続編の「キラキラ共和国」を読書中です。
おわりに
様々なことに合う・合わないはあると思っていて、本に関してもそれはあると思うのですが、「心が温まる、優しいお話が読みたい」という方には、上記3冊はよかったですよ~とお伝えしたいです。
あくまでも個人的な感覚で、それぞれ一言でまとめてしまうのは少し横暴なのですが、
「昨夜のカレー、明日のパン」は、じんわり心を温めてくれる。
「羊と鋼の森」は、美しい世界観に浸れる。
「ツバキ文具店」はほっこりする。
そんな印象を持ちました。
そして3作に共通するのが、温かな方たちが出てくること。
うつ病療養中には有難く、心に優しかったです。
本の中の素敵な登場人物との出会いは、小説の醍醐味の一つだなぁと思っています。
今日はこちらは風がけっこう強いです。
冬の寒さが続きますが、皆さま暖かくお過ごしください。
お読みくださり、ありがとうございました^^